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コラム:犀の角のように
四方のどこにでも赴き
害心あることなく
何でも得たもので満足し
諸々の苦難に堪えて
恐れることなく
犀の角のようにただ独り歩め
(『スッタニパータ』)
『スッタニパータ』は、仏教の多数の諸経典のうちでも、最も古いものであり、歴史的人物としてのゴータマ・ブッダ(釈尊)のことばに最も近い詩句を集成した一つの聖典である(中村元訳『ブッダのことば、スッタニパータ』岩波文庫、より)。
ここで挙げたものは、岩波文庫本で、42篇目に当たります。
ここに見える「犀の角」とは、動物のサイの角のことで、「独り歩む修行者」を指します。中村元氏によれば、「〈犀の角のごとく〉というのは、犀の角が一つしかないように、求道者は、他の人々からの毀誉褒貶にわずらわされることなく、ただひとりでも、自分の確信にしたがって、暮らすようにせよの意である」と定義されています。
『スッタニパータ』では、犀の角のような生き方を、40篇の詩でたたみかけるように説いていきます。ここでは、そのいくつかを挙げてみましょう。
(35)あらゆる生きものに対して暴力を加えることなく
あらゆる生きもののいずれをも悩ますことなく
また子を欲するなかれ
況や朋友をや
犀の角のようにただ独り歩め
(39)林の中で
縛られていない鹿が食物を求めて欲するところに赴くように
聡明な人は独立自由をめざして
犀の角のようにただ独り歩め
(40)仲間の中におれば
休むにも、行くにも、旅するにも
つねに人に呼びかけられる
他人に従属しない独立自由をめざして
犀の角のようにただ独りあゆめ
(52)寒さと暑さと
飢えと喝(かつ)えと
風と太陽の熱と
虻と蛇と
これらすべてのものにうち勝って
犀の角のようにただ独り歩め
(68)最高の目的を達成するために努力策励し
こころが怯むことなく
行いに怠ることなく
堅固な活動をなし
体力と智力とを具え
犀の角のようにただ独り歩め
(75)今のひとびとは自分の利益のために交わりを結び
また他人に奉仕する
今日、利益をめざさない友は得がたい
自分の利益のみを知る人間はきたならしい
犀の角のようにただ独り歩め
………
「犀の角のように」独立して生きていくこと、これは修行者に限らず、一人の人間として理想的な生き方と言えるでしょう。
しかしどうでしょう?最近は、いい年をしていても、親離れ、子離れできず、互いに依存して生きている方が多いように見受けられます。さらには周囲の人にも依存し、甘え、過大な要求をして、それがかなわなければ憎しみを抱く、そんな人もいます。
人はみな孤独を恐れます。しかし、真に自立した人は、孤独を受けいれ、孤独に徹して生きて行きます。そして、孤独に徹した人は、孤独であるが故に、他者に対して優しさを与えることができます。そして結果的に、人に愛され、孤独ではなくなります。
犀の角のように、高潔に、気高く生きたいものです。
投稿者 sougen : 2008年06月14日 18:46
